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患者を虐待、無許可で脳を摘出・・・宇都宮病院事件


2023年2月、東京都八王子市の滝山病院で、患者を虐待したとして看護師らが逮捕される事件があったことは記憶に新しいでしょう。

しかし今から30年前にも、精神科病棟で患者が次々に虐待死した「宇都宮病院事件」があったことはあまり知られていないかもしれません。

今回の昭和平成ノスタルジアでは、いまもなお営業を続ける報徳会宇都宮病院」についてお届けします。

 

User 1

hana

閉鎖病棟は外部の監視の目がないから、虐待や不正が起こりやすいのかもしれないね。

User 2

ハチ子

同じような事件が繰り返されるのは辛いことだわ。

 

宇都宮病院事件とは


1983年、栃木県宇都宮市にある精神科病院・報徳会宇都宮病院で看護職員らの暴行によって患者2人が亡くなりました。

宇都宮病院は、他の精神科病院が扱いにくい患者を受け入れる病院でしたが、事件発覚以前から以下のような様々な違法行為が行われていました。

  • 看護師に診療を違法に行わせる
  • 患者への虐待
  • 作業療法と称して患者を院内で働かせる
  • 患者に農作業をさせて収穫物を転売する
  • 違法に患者を収容する
  • 死亡した患者や遺族に無断で解剖する

 

1983年4月、食事に不満を漏らした患者が看護職員に金属パイプで殴られ、4時間後に死亡しました。

同年12月には別の患者が職員に殴られて翌日に急死しましたが、家族や友人との面会が制限された閉鎖病棟だったため、これらの出来事は公になりませんでした。

しかし、事件の翌年1984年3月14日に朝日新聞が報道し、国会でも精神障害者の人権保護について議論されるようになりました。

国際機関もこの事件を取り上げ、日本の精神保健や精神医療における人権侵害に非難が集まりました。

その結果、1987年には「精神保健法(現在の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)」が成立し、患者の処遇改善が図られるきっかけになりました。

なお、事件の関係者は逮捕され、全員が懲役8ヶ月〜4年の実刑判決を受けています。

患者を死亡させた看護職員以外にも、この病院の支配者であり独裁者である病院長・ 石川文之進も逮捕され、懲役8カ月の実刑判決・医業停止2年の処分を受けています。

 

患者を鉄パイプで何度も・・・


1983年4月、宇都宮病院で看護師らが患者を鉄パイプで殴り死亡させました。

暴行は20分間にも及び、約4時間後に死亡。暴行のきっかけは「患者が食事内容に不満をもらしたこと」だったそうでです。

同年12月には、見舞いにきた知人に病院の不満を訴えた患者が、看護職員らに殴られて死亡しました。

傷害致死として立件されたのはこの2件だけですが、この事件の前後の宇都宮病院では、少なくとも19人が不自然な死をとげていることがわかっています。

また、死亡した患者は許可なく解剖され、本来医師でなければ解剖ができないところ、看護師やケースワーカーら無資格者が解剖を行っていたことも明らかになりました。

さらに、病院長の石川は東大医学部の研究生であったことから、東大との癒着があったことも明らかになっています。

許可なく摘出した脳を標本として寄贈していただけでなく、共同研究と称して病院の患者を利用した研究を行わせる見返りに、東大の医師らから謝礼を受け取っていたのです。

東大の医師らは当然、病院内で虐待が行われていることや、無資格の解剖が行われていることを知っていましたが、事件発覚まで声をあげたものはいませんでした。

 

今もなお続く院長の独裁


1983年、ある患者が東京大学医学部附属病院精神科を訪れ、宇都宮病院の内情を訴えました。

東大病院、弁護士、朝日新聞、日本社会党らが協力して「宇都宮病院問題担当班」を設置して調査を進め、ついに1984年3月、宇都宮病院の一連の悪事が朝日新聞に掲載され、悪事がつまびらかになりました。

事件発覚後、独裁を行っていた院長・石川文之進はそそくさと院長職を退くも、のちに逮捕され実刑判決を受けています。

しかし、懲役を終え、厚労省から下された医業停止2年の処分が明けると、その後は精神医療の現場に復帰しました。

2022年には、宇都宮病院に不当に拘束されたという患者の証言が文春オンラインに掲載されています。

宇都宮病院に着き、連れられていったのは「診察室のようなところ」。

そこへ入室してきたのが、同病院の社主で創業者の石川文之進氏(96)だった。

石川氏は資料を見ながら「酒を飲んで暴れる」「認知症がある」などと心当たりのない症状を指摘してきたという。

引用: ※「男4人組に羽交い絞めにされ精神科病棟へ強制入院」の裏に“長男夫婦との金銭トラブル”《高齢男性が“誤認入院”で提訴》

 

存命であれば100歳近い高齢になる石川文之進医師ですが、2023年10月現在、報徳会宇都宮病院のホームページを見てみると、石川文之進の名前はどこにも見当たりません。

病院長の名前は「鈴木三夫」とあり、石川医師はすでに院長職を退いている様子。

病院の方針には「患者様の人権を尊重」「患者様とのパートナーシップを高める」「人間としての尊厳を最大限に尊重されるべき権利がある」などと耳障りの良い言葉の数々が並んでいますが、過去の事件に関する記述は一切見当たりません。

事件から40年の月日が経過したと言えど、病院の体質は変わっていないのでしょう。

 

まとめ


今回は、40年前に世間を騒がせた報徳会宇都宮病院についてお届けしました。

報徳会宇都宮病院では、患者への日常的な虐待、無許可の献体や無資格の解剖などが行われており、関係者が逮捕されて実刑判決を受けています。

しかし、今もなお病院は存続し、数年前にも医師による不当な拘束が話題になっています。

病院での虐待事件がなくなる日は来るのでしょうか。



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