YOGA
宮崎駿監督の次回作が「君たちはどう生きるか」になる、
との発表を受けて、漫画も小説も売れに売れているらしい。
ブームに乗っかって読んでみた。
中学生のコペルくんが叔父さんとの会話や学校での出来事、友達との関わりの中で、人間が生きていく上で最も大切なことを学んでいくというストーリー。まあ、よくありそうなストーリー。
しかしこの叔父さんという人がなかなかの人物で、コペルくんの考える力や人格を尊重しながら人生について教え諭すくだりが秀逸で、これから親になる身として参考にしたいことが多くあった。
世を見渡すと、忖度しているオジサンの話ばかりだが、コペル叔父さんのような有益な話のできるオジサンが増えていくと子供たちの未来は明るいのだろう。そんな大人になりたいものである。
叔父さんの言葉で一番グッときたのは
「何か心を打たれたことがあったら、よくそれを思いかえして見て、その意味を考えるようにしたまえ」
という台詞。
物語全体としてはクライマックスから外れたところにある一文だが、私が常々感じていることとリンクしていて心に残った。
というのも、
ヨガのインストラクター養成スクールで生徒にいつも似たようなことを言っているからである。
「ヨガが好き」でインストラクターを目指す面々。
では、ヨガのどういうところが好きなのか、と尋ねると残念ながら答えはなんだか曖昧なものになってしまう。
あなたにとってヨガとは何か?という問いに対しても然り。
一般論としては、ヨガとは何かなんて検索すれば答えは出る。
でも、聞きたいのは
「あなたにとってヨガは何をもたらすか」
ということなのだ。
ヨガをして、気持ち良かったー、楽しかったー、という感想のその先を探求してもらいたいのである。
そうしないといつまでたってもヨガのことも自分のこともわからない。一般論をなぞった薄っぺらい言葉しか出てこない。それはヨガではなく「ヨガ風」レッスン。つまらない。
自分と向き合うのがヨガ。なーんて、よく聞くよね?モデルみたいなインストラクターがよく言ってる。
確かにそうなのだが、向き合って何がわかったのかを言葉で説明できるくらいにならないと本質まで辿り着けない。
勿論この作業はとても内的でプライバシーに関わることもあるから、人に話せなくても良いが、自分自身がそれを知っているか、が大事。
ヨガに限らず、本を読んで、映画をみて、絵画をみて、、etc...数々の感動体験を私たちはしている。
そんなとき、
単に「感動した」「泣けた」というのではなく、自分にとっての意味を考えてみて欲しい。
そういう癖がつくと、ヨガを伝える上でも言葉に実感が伴って、人に想いが伝わるようになると思うのだ。
産休まであと少し。最後の養成スクールもスタジオレッスンも終え、2011年より始めたインストラクターの仕事をしばらく中断することになる。
私にとっては、ヨガを実践する以上にヨガを伝えることには大きな意味があった。生徒との関わりの中で得たものはかけがえのないもので、その日々がなくなると思うと少し感慨深い。
これまで養成スクールを受け持たせていただく中で、インストラクターを目指す方にはより深くヨガや自分について考えて欲しいと願ってきた。
この本を読んで、そんな気持ちを思い出し、これまで私のスクールを卒業していった生徒一人一人を想う。
君たちはどう生きるか。
ヨガはコペルくん叔父さんの如く、この問いにたくさんのヒントを与えてくれるだろう。