『私をスキーに連れってて』というタイトルの古い日本の映画がある。
1987年の作品で、主演が三上博史と原田知世。
80年台終盤から90年台初頭にかけてのトレンディドラマ的な流れを作る原型的作品で、フジテレビと小学館が製作している映画である。製作はホイチョイプロダクションというクリエイター集団で、漫画を描いたり映画やテレビ番組の企画をしたりしている人たちである。
この作品の功罪は日本のトレンディカルチャーにおいてすごく大きかったと思っている。
よくあるスキー場で恋をしよう!的なものだとか、クリスマスイブの夜は恋人たちにとってとっても大事なものであるとか、イブの夜にすれ違って会えるか会えないか微妙なドラマがあって最後やっぱりあえてハッピーエンドみたいなものとか、トレンディドラマの要素と思想の源流に位置する作品であったのではないかと思える。この作品がなければ、その後のフジテレビのトレンディドラマ群はなかったように思えるし、広瀬香美もあの形で世に出てこなかったような気がしている。
その映画が、満を持してという感じで今年、電車の中吊りのJRが雪山に誘う宣伝にモチーフとして使われている。 冒頭の写真の宣伝である。功罪とか偉そうに書いてしまったが、当時中学生3年生でたまたまその映画を見て結構真剣にかっこいいな、こういうことしたいなと思っていた。このタイミングでどうしてだろう?と思ったが、去年でちょうど公開から30周年だとのことだ。
単純に懐かしく思うし、そして映画としてもとてもよくできていて楽しい作品なので、ちょっとしたことで忘れられてないのだなと思うこういうことがあることはとても嬉しいことである。
その後、この映画を構成するトレンディカルチャーの各要素がどういう変遷と辿ったのか、その後のことを振り返ってみたい。
まずブームだったスキーについては、95~6年頃から本格的に台頭してきたスノーボードによってあっという間に雪山から滑り降りるスポーツの代名詞のポジションを取られてしまったように見える。伝統的なスポーツなのでなくなりはしないが、あの頃のようなおしゃれな感じはすでになく、スノボーの方がオシャレとされて久しい。そしてすでにスノボーもコモディティ化している。
トレンディドラマの定義はオシャレで内容が薄いことだと思うが、そういうドラマはどうなったのかというと、その後90年台前半くらいから増えてきた凝った脚本のドラマ、エグいストーリーのドラマに枠を置きかえられていき、今では見る影もない。たまに流れを組むゆるいドラマがあるがそんなに数字が取れてはいないようだ。トレンディドラマ役者の代表格だった吉田栄作と織田裕二はそれぞれ別の道を歩み、織田裕二は96年の『踊る大捜査線』のアオシマ役を得たことでその後もその流れで行っているように見える。吉田栄作は90年台中盤くらいにアメリカに謎の武者修行とかに出てたがその後戻ってきて今でも役者をやっている。脇を固めるいい役者になったように思う。
トレンディドラマによくあった、クリスマスイブに待ち合わせしてもすれ違って会えないという類のストーリーは、携帯電話の出現によって禁じ手となってしまった。
制作を担当したホイチョイプロダクションは 『私をスキーに~』の後も『彼女が水着に着替えたら』、『波の数だけ抱きしめて』と1991年まで連続して映画作品を出して、ホイチョイ3部作と呼ばれた。
2007年に90年代のことを描いた映画『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』を企画している。緩やかに仕事をしているようで羨ましい限りである。そろそろ新作が見たい。
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