2007年5月 16日 × 愛知県 × 展覧会

avatar

ブライスコレクション 若冲と江戸絵画


京都に向かうついでに、名古屋で途中下車して、愛知県美術館で「ブライスコレクション 若冲と江戸絵画」を見物。

 

米オクラホマの資産家の息子(石油やガスを流すパイプラインの敷設でその父親が一代で財を築いた)であるジョー・プライスのコレクションから江戸期の絵画作品を109点、正統派絵画(狩野派など)/京の絵画(応挙、蘆雪、森狙仙など)/エキセントリック(若冲、蕭白、蛇玉など)/江戸の画家(菱川師宣、竹田春信、暁斎など)/江戸琳派(酒井抱一、鈴木其一など)の5つのテーマで展示する企画だが、以下、印象に残った絵の覚え書き。

 

簗図屏風
六曲一双の、京の宇治橋の風景を金地着色で描いた豪華な屏風。この展示だけ、30秒周期で照明の明度が変わるライティングが施されていた。空がさあっとかき曇るときの室内の明度変化のような演出で観る金屏風の表情の変化が美しい、面白い演出だった。作品自体は、全体に金箔を張り巡らしながらも、簀に捉えられた落鮎や蟹、セキレイやカワセミ、公孫樹や野菊といったモチーフは押さえた色彩で描かれていたり、構図ががらんとしてたりで、ずっと観ていて飽きない。こんな屏風を置いた家に住みたいものである。

 

猿猴狙蜂図/森狙仙
蜂を狙う猿を描いた掛け軸。背景を描かないがらんとした感じに引き込まれる。

 

松竹梅群鳥八十八寿之図/中住道雲
百鳥図をベースに、孔雀や鳳凰を大きく描くのではなく、いろいろな鳥を実際の大きさのバランスで描いた作品。若冲を思わせる細密描写と色彩は、この感じでヒッチコック「鳥」をリメークしたら面白いと思った。なんだかめでたい「鳥」になりそうである。

 

白象黒牛図屏風/長澤蘆雪
蘆雪の動物は「牡丹孔雀図屏風」も「軍鶏図」も好きだが、これが圧巻。牛と象は画角に収めずその大きさの持つ迫力を表現しながら、そこにちょこんと白犬やカラスを置く構図は妙な可笑し味があるな。

 

犬といえば、山口素絢の「美人に犬図」の犬もよい(美人もよいが)。

 

鳥獣花木図屏風/伊藤若冲
「旭日雄鶏図」や「群鶴図」や「猛虎図」や「紫陽花双鶏図」も嬉しいが、これは実物観ることができてよかった。デフォルメし過ぎてなんだかよくわからない動物が描かれているのも楽しい。六曲一双の屏風に細かいタイル状の模様を描いて、モザイク調に仕上げた作品だが、観ていてあまりに楽しいので、升目の数を数えてしまった。横102くらい×縦140くらい×6曲だから、約86000という話は本当でした。それにしてもこんな絵が江戸時代に描かれていたというのは面白い。

 

これとは正反対に墨一色で描かれた「花鳥人物図屏風」「鶴図屏風」とこれとを見比べていると、ほんと飽きない。みっつの屏風を何回か巡ってみる。

 

ところで「鳥獣花木図屏風ルービックキューブ」というのが売ってたが買わなかったが(ルービックキューブ苦手なので)、買うべきだったろうか。

 

雪中松に兎・梅に鴉図屏風/かつ(クサカンムリに曷)蛇玉
全体に墨を引いた上に、胡粉を撒き散らして雪の降り続く様を表現した動きのある画面に惹かれる。墨を塗り残して紙の白地を見せることで木に積もった雪を表す引き算振りも好きだ。

 

達磨図/伝河鍋暁斎筆
この達磨を観ると、ほかにも達磨図はいろいろあるけれど、これだけでいいやと思う。そう考えると、村上隆はなんで達磨を新しいモチーフに選んだのだろうと思った。別にそれがいかんというわけではなくて、この達磨だって知っているだろうに、何を狙ったのだろうというのが気になった次第。あっちの達磨はアメリカでたいそう売れたらしいから、もうまとめて観られはしないかもしれないが。

 

十二か月花鳥図/酒井抱一
どうも花札の図案に見えてしまうのだが。すみません。

 

あとは「仏涅槃図」「松に鶴図」(ともに森徹山)、「懸岸飛泉図屏風」(円山応挙)なども面白うございました。

 

申し遅れましたが、各作品は

 

http://f.hatena.ne.jp/jakuchu/20060703092158

 

でも観られます(全部かどうかは確認してないが)。

 

---

 

ちなみに収蔵作品展は、まあよくある近現代美術だったり日本の近代洋画だったりで早足で通り過ぎたが、高橋由一の「不忍池」などはなんかよかった。

 

あと「木村定三コレクション」という、密教の法具を集めたコーナーもあって、三鈷杵とか五鈷杵とか羯磨とか割五鈷杵などがたくさん展示されてて、これもなかなか楽しい(あとで知ったが木村定三は密教法具ばかりでなく、近代絵画、江戸絵画、陶磁器なども幅広くコレクションしている模様。知りませんでした)。

 

---

 

名古屋はそのあと、栄から名古屋駅までぶらぶら歩いたが特になにもせず。ちょうど行きがけに明石散人の『二人の天魔王 「信長」の真実』読んでたので熱田神宮寄ってついでに鰻でも、と思ったが止めた。

 

京都に着いてから友人に教えてもらった京都タワー横の「へんこつ」で曙の手形を眺めながら味噌おでんをつつき、なんとなく名古屋を忍ぶ。久々の360度関西弁包囲網の中ではあったが(常連さんの話題は「竹に花が咲いたのでパンダが餓死する」とか「どこかで人工ダイヤの製造に成功したらしい」とか「そのおでんの鍋に松茸を放り込んだら美味いかどうか」などだった)、「底」から掬い上げてもらった筍がうまかったー(Thanks Moodi!)。


地域:愛知県




  • ※コメントはまだありません。
名前:
E-mail: